2026年7月
健康・検査のこと健診結果の紙、上から順に全部説明します|検査技師と読む保存版
年に一度、あの細長い封筒が届きます。
多くの方は、判定のアルファベットだけ確かめて、ほっとしたり、ため息をついたりして、引き出しにしまいます。検査室で働く者としては、それが少し、もったいないんです。
あの紙は、上から順に読むと、あなたの体をひとめぐりする物語になっています。今日は、その順番どおりに、ひとつずつ案内します。長い記事なので、ブックマークして、毎年、結果の紙と一緒に開いてもらえたら。それがこの記事のいちばんの使い方です。
その前に、「判定の記号」の正体
紙のいちばん目立つところにある、AとかCとかD。あれは絶対の宣告ではなく、「次に何をするか」の案内です。
- 「要再検査」は、病気の宣告ではありません。「同じ検査をもう一度」の合図です。くわしくは → 健診で「要再検査」と言われたら
- そもそも「基準値」がどう決められているかを知ると、一喜一憂がぐっと減ります → 検査の基準値、誰が決めてるの?
判定の言葉や基準値の欄は、じつは健診の施設ごとに少しずつ違います。去年と違う施設で受けて「判定が変わった」ように見えるとき、体ではなく物差しのほうが変わっていることもあります。だから、紙を比べるときは「どこで受けたか」もセットで見てください。
身長・体重・BMI・腹囲
体の「入れ物」の記録です。数字そのものより、去年からの増減に意味があります。急に増えた・減った、が一番のサインです。
血圧
血管にかかっている圧力。50代の女性は、閉経を境に上がりやすくなります。健診の一回の値より、家庭で測る血圧のほうが大事、というのがこの項目の一番のポイントです。
→ くわしくは 「血圧、上が140」にドキッとした50代へ
脂質(LDL・HDL・中性脂肪)
血液の中のあぶらの話。LDL(悪玉)・HDL(善玉)・中性脂肪の3つが並びます。ここも閉経後にぐっと動く項目で、「食生活は変えていないのに上がった」には、ちゃんと理由があります。
→ くわしくは 閉経したら、コレステロールが上がった?
血糖(空腹時血糖・HbA1c)
血糖の欄には、性格の違う2つの数字が並んでいます。空腹時血糖は「今日の値」、HbA1cは「この1〜2か月の平均」。片方だけでなく、2つセットで見るのがコツです。
→ くわしくは 空腹時血糖とHbA1c、どう違う?
肝機能(AST・ALT・γ-GT)
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるくらい、症状を出さずに数字にだけサインを出します。お酒だけでなく、体重や脂肪のつき方とも関係の深い項目です。数値に出る前の変化が、超音波で見えることもあります。
→ くわしくは 脂肪肝は、超音波でこう見えています
腎機能(クレアチニン・eGFR)
腎臓の「ろ過の力」の目安です。クレアチニンは筋肉量の影響を受けるので、同じ値でも体格によって意味が変わります。eGFRは年齢も込みで計算した「ろ過力の推定値」。ここが続けて下がってくるときは、放置しないで相談を。
尿検査(蛋白・糖・潜血)
尿は、体の中を通ってきた「報告書」です。蛋白は腎臓、糖は血糖、潜血は尿の通り道のサインとして見ます。ただし、その日の体調や運動、女性では月経の影響で引っかかることもあります。だから一度の陽性であわてず、「再検査で確かめる」が基本の流れです。
血液一般(ヘモグロビン・赤血球など)=貧血の欄
ヘモグロビンは「今、血液が運べる酸素の量」。ここが正常でも、鉄の蓄え(フェリチン)が減っている「隠れ貧血」もあります。疲れやすさ、立ちくらみ、そして氷をガリガリ食べたくなる——心当たりのある方は、こちらへ。
→ くわしくは 氷をガリガリ食べたくなる、その疲れは貧血かも
心電図
胸と手足に電極をつけた、あの数分。心臓の電気の流れを12の方向から見ています。「異常なし」でも「その数分間では」という意味なので、動悸などの症状があるときは、それも伝えてください。
→ くわしくは 心電図の電極、なぜ10個も?
胸部X線
肺と心臓の「影絵」です。呼吸器のほか、心臓の大きさの目安も見ています。ここで何か言われたら、たいていはCTなどの「もっと細かい検査」で確かめる流れになります。
腹部エコー(ついている健診なら)
肝臓・胆のう・膵臓・腎臓・脾臓を、超音波でひとまわり。グッと押されるのには、ちゃんと理由があります。
→ くわしくは エコー検査で、なぜグッと押されるの?
オプション欄(つけた方も、来年つけるか迷っている方も)
- 腫瘍マーカー:「高い=がん」ではありません。受ける前に、この検査の性格を知っておいてほしいのです → 腫瘍マーカーが高い、と言われて不安なあなたへ
- 頸動脈エコー:首の血管は、全身の動脈硬化を推し測る手がかり。「プラーク」と言われた方はこちら → 頸動脈エコーで「プラークがあります」と言われたら
- 甲状腺(TSH・FT4):疲れ・動悸・気分の落ち込みが「更年期のせい」と決まる前に → その動悸、本当に更年期ですか?
- アレルギー検査:陽性=アレルギー、ではないという話 → アレルギー検査でスギ花粉がカンスト
紙を全部読んだら、最後にこれだけ
3つだけ、検査室からのお願いです。
- 去年の紙と、二枚並べてください。 今年の数字ひとつで決めつけるより、去年からどう動いたかのほうが、ずっと多くを教えてくれます。数値どうしのつながりの読み方は → 50代女性の健診、数値は「つながって」読む
- 引っかかったら、責められたと思わないでください。 健診は、見落としを防ぐために、わざと網を細かくしてあります。健康でも引っかかるように、できているんです。
- 来年の健診は、前日の過ごし方で数字が変わります。 せっかく受けるなら、ふだんの体で → 健診の前日にやらないこと
あの紙を読む時間は、年に一度だけ、自分の体とゆっくり向き合う10分です。今年のぶんを、引き出しにしまう前に——この記事と一緒に、上から順に、読んでみてください。
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。個々の結果の解釈や、診断・治療は医療機関でご相談ください。