2026年7月
健康・検査のこと腫瘍マーカーが高い、と言われて不安なあなたへ|「高い=がん」ではありません
・腫瘍マーカーが高くても、「がん」とは限りません。良性の病気や、肝臓・腎臓の不調、飲酒・喫煙でも上がることがあります。
・逆に、がんがあっても、数値が正常のこともあります。腫瘍マーカーだけで、がんを確定することはできません。
・だから、高い数値は「がんの宣告」ではなく、「次に何を調べるか」の手がかり。あわてず、次の検査へ進むための入り口だと考えてください。
健診や人間ドックの結果で、「腫瘍マーカーが高め」。——この一文を見た日の、心臓のざわつき。よく、わかります。「がんかもしれない」と、そこから頭がいっぱいになってしまいますよね。
でも、どうか少しだけ、落ち着いて読んでください。腫瘍マーカーは、そんなに単純な検査ではないのです。検査技師として、そして自分の健診にも腫瘍マーカーが入っている一人として、この検査の“ほんとうの意味”を、正直にお話しします。
▲ 数値が高くても、あわてないで。だいじなのは「次に何を調べるか」。
腫瘍マーカーって、そもそも何?
腫瘍マーカーとは、血液や尿に含まれる、特定の物質を測る検査です。がんがあると増えやすい物質を調べることで、がんの可能性や、治療の経過を参考にするために使われます。
大事なのは、がんの種類によって、増えやすい物質が違うということ。だから「どのマーカーが高いか」で、どのあたりの臓器に注目すればいいか、見当をつける手がかりになります。
ただ、腫瘍マーカーには、はっきりした“くせ”があります。
- 進行したがんでは、参考になりやすい一方、早期のがんでは、反応しにくいことがある
- 治療後に数値が下がるかを見ることで、治療の効果や、再発の目安として使われることもある
つまり、早期発見の「万能な検査」ではないのです。ここが、いちばん誤解されやすいところ。
大事な注意点:高くても、がんとは限らない
もう一度、いちばん大切なことを。腫瘍マーカーだけで、がんの確定診断はできません。
というのも、腫瘍マーカーは、がん以外の理由でも上がるからです。
- 良性の腫瘍
- 肝臓や腎臓の病気
- 飲酒や喫煙などの生活習慣 など
こうした理由で高くなることが、ふつうにあります。ですから、異常値が出たときは、画像検査(エコー・CTなど)や内視鏡などを組み合わせて、総合的に判断していくことになります。数値ひとつで決めつけたりは、しないのです。
腫瘍マーカーは、健診や人間ドックのオプションとして選べることが多い検査です。実は、私自身の健診にもCEAとCA19-9という項目が入っています。ただ、これは「入れておけば安心」という魔法の検査ではありません。症状・年齢・家族歴などに応じて、ほかの検査と組み合わせて考えるのが基本。オプションを選ぶときは、そこも意識してもらえたらと思います。
ついでに、もう少し打ち明け話を。実は私のCEA、基準値の中には入っているのですが、年々、じわじわと上がってきているんです。CEAは幅広いがんで上がる一方で、喫煙や加齢でも軽く上がることが知られています。私は、たばこは吸ったことがありません。……となると、加齢によるものかな、と思っています。もちろん、決めつけはできません。だからこそ私がしているのは、「毎年の変化を、見ておく」こと。一度きりの数値よりも、その移り変わりのほうが、ずっと多くを語ってくれますから。
代表的な腫瘍マーカー
「◯◯が高い」と言われたとき、それがどのあたりに関係するマーカーなのか。代表的なものを、ざっと挙げておきます(あくまで“関係しやすい臓器”の目安で、これだけで決まるものではありません)。
| マーカー | 関係しやすいところ(目安) |
|---|---|
| PSA | 前立腺 |
| AFP・PIVKA-II | 肝臓 |
| CEA | 大腸などの消化器(幅広く) |
| CA19-9 | 膵臓・胆道 |
| CA125 | 卵巣 |
| CA15-3 | 乳房 |
| SCC・CYFRA(シフラ)・NSE | 肺など(NSEは神経系にも) |
マーカーが高いとき、まず考えること
もし数値が高かったら。お医者さんは、こんなことを順に見ていきます。あなたも、この視点を知っておくと、落ち着いて相談できます。
- そのマーカーは、どの臓器に関係するものか
- どの程度高いのか(少しか、大きくか)
- 前回から上がっているか(変化の向き)
- 症状はあるか
- 画像検査やほかの採血の結果と、合わせてどうか
ひとつの数値を「点」で見るのではなく、いくつもの情報を「面」で見て、判断していくのです。(この「1つの数値で決めない」考え方は、基準値って誰が決めてるの?にも通じます。)
どんなときに、くわしく調べるの?
では、どんなときに“精密検査”へ進むのか。目安はこうです。
単発で、少し高いだけのときよりも——
- 繰り返し高い
- だんだん上がってきている(上昇傾向)
- 気になる症状がある
こういうときのほうが、要注意です。精密検査では、マーカーに応じて、腹部エコー・CT・MRI・内視鏡・婦人科の超音波などを組み合わせて調べていきます。
最後に:高い数値は「宣告」ではなく「手がかり」
もう一度、いちばん伝えたいことを繰り返します。
腫瘍マーカーが高くても、がんではないことがあります。逆に、がんがあっても、数値は正常のことがあります。
だから、「高い=がん確定」ではありません。高い数値は、「次に何を調べるか」の手がかり。そう考えるのが、いちばん正しい向き合い方です。
結果の紙を見て、眠れない夜を過ごしている方へ。あの数字は、あなたを追いつめるためのものではなく、次の一歩を指し示すためにあります。どうか一人で抱え込まず、次の検査へ、落ち着いて進んでくださいね。
まとめ
- 腫瘍マーカーは、がんの可能性や治療経過を参考にする検査。早期発見の万能検査ではない
- 高くてもがんとは限らず(良性・肝腎の病気・飲酒喫煙でも上がる)、がんでも正常のことがある
- 大事なのは、臓器・程度・前回からの変化・症状・画像を合わせて見ること
- 高い数値は「宣告」ではなく「手がかり」。あわてず、次の検査へ
※この記事は、検査技師としての一般的な知識をまとめたものです。腫瘍マーカーの判断は個人差が大きく、必ず医療機関で、医師の説明のもとにご相談ください。