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2026年7月

健康・検査のこと

検査の基準値、誰が決めてるの?|「健康な人の真ん中95%」のはなし

先に、結論から。
・多くの検査の基準値(基準範囲)は、健康な人をたくさん集めて、その真ん中95%が入る範囲として決められています。
・つまり、基準値=正常、ではありません。健康な人でも、20人に1人(5%)は、もともと基準からはみ出します。
・だから、1つの数値がちょっと外れても、あわてないで。検査結果は、症状や経過とあわせて読むものです。

健診の結果の紙。数値の隣に、小さく書かれた「(  〜  )」の範囲。あの基準値から、ひとつでも外れて赤い字になっていると、どきりとしますよね。

でも、その基準値。そもそも、誰が、どうやって決めているのか——考えたこと、ありますか。今日は検査室の裏側から、その話をお届けします。

健康な人の検査値の分布(ベルカーブ)と、真ん中95%を基準範囲とすることを示したイラスト

▲ 基準範囲は「健康な人の、真ん中95%」。両端は、はみ出します。

基準値は「健康な人の、真ん中95%」

多くの検査の基準値は、こうやって作られます。

  1. まず、性別・年齢などの条件をそろえた、健康な人を、たくさん集めます
  2. その人たちの検査値が、どんなふうにばらついているか(分布)を、統計的に調べます
  3. そして、真ん中の95%が入る範囲を「基準範囲」とします。上下から2.5%ずつ、両端を外した真ん中、というわけです

正確には「基準値」ではなく「基準範囲」と呼びます。健康な人の集団が、自然とおさまる幅。それが、あの紙の( 〜 )の正体です。

💡 検査技師の豆知識:真ん中95%の、決め方
データの散らばりが左右対称(正規分布)に近ければ、平均値を中心に、上下へ標準偏差の約2倍(正確には1.96倍)を取ると、ちょうど真ん中95%になります。ただ、検査値は片側に裾を引く(左右非対称な)ことも多くて、その場合は計算に頼らず、低いほうと高いほうから2.5%ずつを直接切り落とす方法を使います。……白状すると、私はこの統計の部門が、ちょっと苦手でした(このお話は、記事の最後で)。

だから「基準値=正常」ではありません

ここが、いちばんお伝えしたいところです。

基準範囲は「健康な人の真ん中95%」。裏を返すと、もともと健康な人でも、20人に1人(5%)は、基準からはみ出すということ。あなたの体質で、ずっと少しだけ高め・低めの項目があっても、それがあなたにとっての普通、ということは十分にあるのです。

逆もあります。基準範囲の中におさまっていても、その人にとっては要注意、ということも。だから——基準値は「正常か異常か」の線引きではなく、あくまで“ものさし”のひとつ。そう考えてもらえたら、数値ひとつに振り回されずにすみます。

もうひとつの物差し「臨床判断値」

実は、基準範囲とは別に、臨床判断値(カットオフ値)という物差しもあります。

これは、「病気があるか」「治療したほうがいいか」「予防的に手を打つべきか」を判断するための、いわば線引きの値。学会のガイドラインや、検査キットの推奨値が、そのまま使われることもあります。

たとえば、血糖値やコレステロールのように、値と病気の関係がはっきりしている項目。こういうものは、健康な人の分布から作った基準範囲よりも、「ここを超えたら治療を考えましょう」という臨床的な基準のほうが重視されます。

基準範囲と臨床判断値、なぜズレる?

同じ検査項目でも、この2つの値が一致しないことは、めずらしくありません。理由は、見ているものが違うからです。

物差し 何をもとに作る? 得意なこと
基準範囲健康な人の値の分布(真ん中95%)その項目の「標準的な見方」を知る
臨床判断値病気の人も含めて「どこからリスクが上がるか」診断・治療・予防の判断

基準範囲は、健康な人を中心に作ります。いっぽう臨床判断値は、病気の人も含めて、どこからリスクが高まるかを見て決めます。だから、基準範囲の中でも治療の対象になることがあり、逆に、基準範囲から外れても、ただちに病気とは限らないのです。

検診と診断では、使い分けています

実務では、こんな流れになります。

  • 検診では、まず基準範囲を使って、気になる値をざっくり拾い上げます(広くふるいにかける)
  • そして、必要な項目は、臨床判断値であらためて評価します(血糖や脂質などは、こちら)

大事なのは、どちらの物差しを使うにしても、検査結果は1つの数値だけで決めない、ということ。症状、これまでの病歴、ほかの検査、そして時間の流れの中での変化。それらとあわせて、はじめて意味を持ちます。(数値を「点」ではなく「線」で読む話は、50代の健診、数値はつながって読むにも書きました。)

最後に、ここだけの話

さいごに、正直な打ち明け話を。

この統計の話が出てくる生化学という部門、私は、ちょっと苦手でした。検査データの信頼性を保つ「精度管理」や、標準偏差、t検定といった統計——数字を扱う仕事なのに、この統計の部分が、どうにも難しくて。

今の私は、生理検査(心電図やエコーなど、体の働きを直接みる部門)の担当です。動いているものを、その場で見る。こちらのほうが、自分には合っている気がしています。……というのは、ここだけの話。

同じ検査技師でも、得意・不得意はあるものです。だからこそ、それぞれの部門のプロが力を合わせて、あなたの1枚の結果表ができあがっている。そう思って、次に健診の紙を見てもらえたら、うれしいです。

まとめ

  • 基準値(基準範囲)は、健康な人の真ん中95%が入る範囲
  • だから基準値=正常ではない。健康でも20人に1人ははみ出すし、範囲内でも要注意のことがある
  • 診断・治療には、別の物差し「臨床判断値」を使う(血糖・脂質など)
  • 数値ひとつで一喜一憂せず、症状・経過とあわせて読むのがいちばん

※この記事は、検査技師としての一般的な知識をまとめたものです。検査値の見方や基準は施設・項目によって異なります。気になる数値は、必ず医療機関でご相談ください。

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