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2026年5月

健康・検査のこと

空腹時血糖とHbA1c、何が違う?50代からの血糖値の読み方を検査技師が解説

健診票に並ぶ「空腹時血糖」と「HbA1c」。なんとなく見ているけれど、違いを説明できますか?「境界型」と言われて不安になっていませんか? 長年検査の仕事に携わってきた私が、血糖値の2つの数値の意味と、50代で気をつけたいポイントをやさしく解説します。


50代で血糖値が気になり始めた——その背景にも理由があります

「空腹時血糖が少し高めですね」「HbA1cが基準を超えています」。健診でそう言われて、ドキッとした方もいるかもしれません。甘いものを特に食べているわけでもないのに、なぜ?と。

これも、コレステロールや血圧と同じで、50代という年代が関係しています。かくいう私自身も、空腹時血糖は正常の範囲なのに、HbA1cだけがじわじわと上向きに推移しています。検査の知識がある立場から言うと、これは「ふだんの血糖が少しずつ高めになってきているサイン」。一度の空腹時血糖では見えない変化が、HbA1cには表れるのです。

決して、あなたの努力が足りないせいではありません。次に、その理由をお話しします。

関連記事:50代で血圧が高くなってきた?閉経後の血圧上昇と数値の見方を検査技師が解説

なぜ50代で血糖値が上がる?やはり「女性ホルモン」が関わっています

血糖値の上昇にも、閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の減少が関係しています。

私たちの体は、食事でとった糖を「インスリン」というホルモンの働きで処理し、血糖値を一定に保っています。実はエストロゲンには、このインスリンが効きやすい状態を保つ手助けをする働きがあります。

ところが閉経でエストロゲンが減ると、インスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性といいます)、血糖値が上がりやすくなります。さらにこの時期は、おなかまわりに脂肪がつきやすくなることも、血糖値の上昇を後押しします。生活が大きく変わっていなくても数値が動くのは、こうした体の変化があるからです。

コレステロール・血圧・血糖値——50代で気になり始めるこの3つは、どれも「女性ホルモンの減少」という同じ根っこでつながっているのです。

血糖値の数値の読み方——「空腹時血糖」と「HbA1c」

健診でよく見る血糖関連の数値を整理します。日本糖尿病学会の基準にもとづいた目安です。

検査項目 区分と目安 どういう検査か
空腹時血糖 正常:99mg/dL以下/正常高値:100〜109/境界型:110〜125/糖尿病型:126以上 10時間以上絶食して測る、最もなじみのある項目
食後(2時間)血糖 正常:140未満/境界:140〜199/糖尿病型:200以上 食後やブドウ糖負荷試験で測る。「隠れ高血糖」を見つける手がかり
随時血糖 糖尿病型:200以上 食事と関係なく測った血糖値
HbA1c 予備軍の目安:5.6〜6.4%/糖尿病型:6.5%以上 過去1〜2か月の血糖の「平均」を示す

※糖尿病型の基準を1回満たしただけで確定診断にはならず、別の日に再検査するか、症状などと合わせて医師が総合的に判断します。

検査技師が伝えたい、血糖値を見るときのポイント

ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。

1. 「空腹時血糖」と「HbA1c」はまったく別のものを見ています よく混同されますが、この2つは見ているものが違います。たとえるなら——

  • 空腹時血糖は「今日の気温」。検査したその瞬間の血糖値です。
  • HbA1cは「ここ1〜2か月の平均気温」。最近の血糖の状態が高めだったかどうかを表します。

だから、「検査前日だけ節制したら空腹時血糖は下がったけれど、HbA1cは高いまま」ということが起こります。HbA1cはごまかしがきかない、普段の生活がそのまま出る数値なのです。両方を合わせて見ることで、今と最近の両方がわかります。

空腹時血糖とHbA1cを温度計で比べたイラスト

2. HbA1cにも”苦手”があります HbA1cは便利な指標ですが、貧血や腎機能の状態などによって、実際よりも高く・低く出ることがあります。「数値が良いから絶対に大丈夫」とは言い切れない場合もある、ということは知っておくとよいでしょう。

3. 「境界型」「予備軍」こそ、放置しないで 「まだ糖尿病じゃないから」と安心して放置してしまう人がとても多いのですが、ここが実は分かれ道です。境界型の段階で生活を見直せば、糖尿病への進行を防げる可能性が高い。逆に放置すると、自覚のないまま進んでしまいます。「予備軍」は、“今なら間に合う”というサインだと受け止めてください。

4. 空腹時が正常でも油断できない——「血糖スパイク」と糖負荷検査 ここが、見落とされやすい大切なポイントです。空腹時血糖が正常でも、食後だけ血糖が急上昇する「血糖スパイク(食後高血糖)」が隠れていることがあります。空腹時の一回の採血では見つけにくく、私自身がそうであるように、HbA1cがじわじわ上がってくることで初めて気づくこともあります。こうした”隠れ高血糖”を見つけるには、ブドウ糖を飲んで時間ごとに血糖を測る「75g経口ブドウ糖負荷試験(糖負荷検査)」が役立ちます。空腹時は正常なのにHbA1cが気になり始めた——そんなときは、医師に糖負荷検査を相談してみるのも一つの方法です。

受診・相談の目安——いつ医師に相談すべき?

血糖値についても、次のような場合は早めに相談しましょう。

  • 健診で「糖尿病型」「要医療」「要再検査」と案内された
  • 「境界型」「予備軍」と言われた(放置せず、まずは相談を)
  • 血糖値が高く、コレステロールや血圧など他のリスクも重なっている
  • のどの渇き、頻尿、急な体重減少などの気になる症状がある

血糖値が高い状態が続くと、血管が傷み、動脈硬化が進み、神経や目、腎臓などにも影響が及びます。でも、早く気づいて対処すれば、十分に防いだり遅らせたりできます。まずは食事(食べる順番や量)と運動から。診断や治療が必要かどうかは、必ず医師に判断してもらいましょう。私は検査値の見方はお伝えできても、診断はできません。そこはかかりつけ医の出番です。

まとめ——2つの数値で「今」と「最近」を知る

  • 50代で血糖値が上がるのは、女性ホルモンの減少でインスリンが効きにくくなるため。自然な変化です。
  • 空腹時血糖は「今日の気温」、HbA1cは「平均気温」。両方を合わせて見ましょう。
  • 「境界型」「予備軍」は放置せず、“今なら間に合う”サインとして受け止めて。
  • コレステロール・血圧と重なるほどリスクは上がるので、3つをセットで見ることが大切です。

数値は、あなたを責めるためのものではなく、体が早めに教えてくれているサインです。一人暮らしだと健康はつい後回しになりがちですが、年に一度の健診を、自分の体と向き合う大切な機会にしていきたいですね。

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※本記事は血糖値の一般的な見方を解説したものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。気になる症状や数値がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

※基準値は検査施設や条件によって異なる場合があります。診断基準は日本糖尿病学会のガイドラインを参考にしています。

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