2026年7月
健康・検査のこと頸動脈エコーで「プラークがあります」と言われたら|1.2mmは、危ないの?
「頸動脈にプラークがあります。1.2mmですね」
健診の結果にこう書かれていたら、不安になると思います。プラーク。詰まる。脳梗塞。こわい言葉が、頭の中でつながっていく。
先に、いちばん大事なことをお伝えします。
プラークは「あるかないか」より、これから進むかどうかが大事です。
1.2mmのような小さなものは、すぐに何かが起きるという意味ではありません。「動脈硬化が始まりましたよ」という、体からの早めのお知らせです。
やることは、生活習慣の見直しと、経過を見ること。あわてなくて大丈夫ですが、そのままにはしないでください。
頸動脈エコーは、痛くない検査です
頸動脈エコーは、首の血管(頸動脈)を超音波で見る検査です。
ベッドに仰向けに寝ていただいて、首にゼリーを塗り、プローブという器械を当てるだけ。痛みはありません。放射線も使わないので、被曝の心配もありません。 時間はだいたい15〜20分ほど。体への負担は、とても少ない検査です。
首元の開けやすい服で来ていただけると、こちらとしては助かります。
私たちは、総頸動脈から、枝分かれするところ(分岐部)、内頸動脈、外頸動脈、そして椎骨動脈まで、横からと縦からの両方の向きで、順番に見ていきます。血管の曲がりぐあいや形、プラーク、狭くなっているところ、詰まっているところがないか。首の右と左、両方です。
首の血管を見ると、全身が見えます
なぜ、わざわざ首なのか。
頸動脈は、体の中では比較的浅いところを通っている太い動脈です。そのため超音波で観察しやすく、血管の壁の厚さを測ることができます。
そして動脈硬化は、首だけに起きるものではありません。だから首の血管の状態は、全身の動脈硬化の程度を推し測る手がかりとして使われます。脳梗塞や心筋梗塞のリスクを考えるときの、材料のひとつになります。
高血圧・脂質異常症(コレステロールなど)・糖尿病がある方、たばこを吸ってきた方。それから、健診で動脈硬化を指摘されて気になっている方。生活習慣病の「今」を確かめる検査として受けられることが多いです。人間ドックのオプションや、外来で受けられます。
「1.1mm」と「1.5mm」——検査室の物差し
ここから、少し数字の話をします。
血管の壁が、限られた部分で内側に隆起しているものをプラークと呼びます。日本の標準的な評価法では、1.1mm以上の限局した隆起をプラークとして扱います。
そして、そのうち1.5mmを超えるものは、「性状(せいじょう)」を評価する対象になります。性状というのは、場所や大きさに加えて、表面の形・内部の様子・可動性といった、そのプラークの性質のことです。
なぜ、大きさだけでなく性質まで見るのか。ここが、この検査のいちばん大事なところです。
私たちが、いちばん気にしているもの
私たちが画面を見ながら気を引き締めるのは、大きな数字が出たときではありません。性状の気になるプラークを見つけたときです。
具体的には、こういうものです。
- 可動性がある(血流に合わせて動いて見える)
- 低輝度(やわらかそうに見える)
- 表面をおおう線維性の被膜が、薄そうに見える
こうしたプラークは、はがれた一部が血流に乗って、脳の血管を詰まらせる可能性を意識して、経過を見たり、追加の評価を考えたりする対象になります。
一方で、石灰化して硬くなったプラークは、大きくても、比較的安定していることが多いとされます。大きさだけでは決まらないのです。だから私たちは、大きさと一緒に、その性状を見ています。狭くなっている場合には、血流の速さと狭窄率も合わせて評価します。
性状の気になるプラークが見つかっても、それがそのまま「これから何かが起こる」という意味ではありません。「注意して見ていきましょう」という意味です。結果の説明は必ず主治医から受けて、指示があれば、それに従ってください。
で、1.2mmは、危ないの?
最初の話に戻ります。「1.2mm」と言われた人へ。
小さいです。でも、ゼロではありません。私はこう受け取ります。動脈硬化が、始まっている。 悪い知らせのようですが、実はこれ、かなり早い段階で気づけた、ということでもあります。
そのうえで、大事なことをひとつ。
一度かたくなってしまった血管は、元には戻りません。
だから目標は、「なかったことにする」ではなく、これ以上進ませないことになります。血圧、コレステロール、血糖。たばこ。地味ですが、効くのはそこです。(血圧の記事とコレステロールの記事も、よかったら)
そして、1年後にもう一度測ってみてください。数値ひとつを点で見るのではなく、去年と今年を線でつなぐ。 これは腫瘍マーカーの記事でも書いた、私の変わらない見方です。1.2mmが1.3mm、1.4mmと進んでいくのか、それとも止まっているのか。そちらのほうが、今日の1.2mmという数字よりずっと大事です。
それでも、一度は受けてみてほしい理由
長くこの検査をしていて、いつも思うことがあります。
血管の傷み方は、年齢どおりではないんです。
ご年配の方でも、少し体格のいい方でも、壁が薄く、きれいに保たれている方がいます。逆に、まだお若いのに、ずいぶん進んでいる方もいる。見た目や年齢だけでは、分からないのです。
だから、一度は受けてみてほしいのです。何もなければ、それがいちばんの安心材料になります。何かあれば、早く気づけたという幸運です。どちらに転んでも、損のない検査だと思っています。
白状すると、私自身も、正常範囲ではあるものの、壁が厚くなってくる傾向があります。人の首ばかり見ていて、自分の首のことも、ちゃんと気にしています。
首の血管は、あなたの生活を、静かに記録しています。ときどき、のぞきに来てください。
なお、この検査で見ているのは「血管が傷んできているか」であって、脳卒中を予言できるわけではありません。もしもの日のためのサインと備えは、脳卒中の記事にまとめました。あわせて読んでもらえたら、うれしいです。
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。検査結果の解釈や、診断・治療は医療機関でご相談ください。