2026年7月
健康・検査のこと健診の前日にやらないこと|検査技師が現場から正直に(食事・服装・直前の運動まで)
・前日の夜は、軽めの食事を19時ごろまでに。お酒と脂っこいものは、数値にそのまま出ます。
・当日の朝は、コップ1杯のお水はOK。お薬は種類によるので、必ず健診機関や主治医の案内にしたがって。
・前日の筋トレ・山登りも、数値を動かします。健診の前は、体もおやすみモードで。
・服は上下わかれた、脱ぎ着しやすいもの。これが検査室からの、切なるお願いです。
健診の受付で、問診票を見ながら、心の中でそっと思うことがあります。
「昨日、山登りしたんですね……」
検査する側として長年働いてきて、「これ、受ける人に知っておいてもらえたら、お互い幸せなのにな」と思うことが、たくさんたまりました。今日はそれを、正直に書いてみます。
▲ 健診の前日、検査技師はこうしています。
そもそも:健診は「ふだんの自分」を見るもの
最初に、大事な前提をひとつ。
健診で本当に見たいのは、ふだんの生活をしている、いつものあなたの状態です。前日だけ絶食したり、急に節制したりして「よそゆきの数値」を作っても、あまり意味がありません。
……とはいえ。少しでも良い数字を見たいのが人情ですよね。私もそうです。だからこそ、「これをすると数値が不正確になる」ことだけは、避けてほしいのです。ここからは、その話です。
前日の夜:軽めの食事を、19時ごろまでに
前日の夜は、軽めの食事を、19時ごろまでに済ませるのがおすすめです(施設の案内があれば、そちらを優先してください)。
そして、数値に直結する2つ。
- お酒 … 肝臓の酵素 γ-GTP(ガンマジーティーピー)を上げやすい項目です。「昨日ちょっと飲んだだけ」が、しっかり顔を出します
- うな重・揚げ物などの脂っこいもの … 中性脂肪が上がりやすくなります
採血した血液を機械で分離すると、上澄み(血清)ができます。ふだんは澄んだ淡い黄色。ところが中性脂肪がぐっと高いと、この血清が牛乳を混ぜたように白く濁るんです(乳び血清といいます)。前夜のごちそうは、検査室では見た瞬間にわかる——という話でした。
ちなみに血糖については、検査の目的によっては「空腹時」ではなく、食後2時間などの中間の値を見たい場合もあります。絶食の指示は施設・検査項目で変わるので、案内どおりに。
当日の朝:お水1杯はOK。お薬は「種類による」
- コップ1杯のお水 … 飲んで大丈夫です(むしろ推奨しています。脱水気味だと採血もしにくいのです)
- お薬 … 血圧の薬など、検査に影響しにくいものは服用してよいとされることが多いです。ただし——糖尿病の薬(血糖を下げる薬)は要注意。絶食のまま飲むと低血糖を起こす危険があるため、飲まないよう案内されるのが一般的です。必ず、事前に主治医や健診機関に確認してください
- コーヒー … カフェインには利尿作用があります。腹部の超音波(エコー)では、膀胱に尿をためた状態で見たい部分があるので、直前のコーヒーはちょっと困りもの。がまんして、水にしておきましょう
腹部エコーが空腹で行われるのには、理由があります。食事をすると胆のう(たんのう)が縮んでしまって、きちんと観察できなくなるんです。「朝ごはん抜きって、つらい」——わかります。でも、あれは胆のうのためなのです。
服装:検査室からの、切なるお願い
検査する側から、正直にお願いさせてください。
- 上下がわかれた(セパレートの)、脱ぎ着しやすい服がいちばんです。ワンピースは、心電図やエコーのとき、ほぼ全部脱ぐことになってしまいます
- ストッキングは、できれば避けて。心電図では足首に電極をつけるので、着脱がひと苦労です
- アクセサリー(ネックレスなど)は、当日は外しておくのがおすすめ。検査のたびに外すことになるので、最初からないほうがラクです
忘れられないのは、年配の女性がお着物でいらしたとき。簡易なお着物ではありましたが、さすがに検査室がざわつきました。お着物の凛とした美しさは素敵です。でも健診の日だけは、どうか、楽な服で……。
直前の運動:それ、ぜんぶ数値に出ます
これが、現場で一番よく出会う「もったいない」です。
前日〜直前の激しい運動(筋トレ、山登り、長距離ランなど)で、こんな項目が上がることがあります。
| 動く項目 | なぜ動く? |
|---|---|
| CK・AST(GOT)・LDH | 筋肉を使うと、筋肉から出てくる酵素。筋トレの翌日はてきめん |
| 尿酸(UA)・クレアチニン(Cre) | 激しい運動や脱水のあとに上がることがある |
| 尿タンパク | 運動のあとに、一時的に出ることがある |
問診で「昨日、筋トレをがっつりやりました」「昨日、山に登ってきました」とおっしゃる方、実は結構いらっしゃいます。せっかくの健康習慣なのに、数値だけ見ると「肝臓や腎臓が心配?」に見えてしまって、再検査になることも。健診の前日だけは、体もおやすみにしてあげてください。
逆に、絶食をがんばりすぎるのも考えもの。長すぎる絶食では、遊離脂肪酸や総ビリルビンが上がることがあります。指示された絶食時間を守る——それで十分です。
エコーの中の人から、ひとことだけ
腹部エコーを担当している身として、最後にひとつ。
お腹のガスは、どうしようもありません(超音波はガスが苦手なんです)。ガスが多い日でも、どうか気にしないでください。こちらで何とか工夫します。
そのかわり、呼吸の合図にお付き合いいただけると、とても助かります。「大きく吸って、止めてください」——このとき腹式呼吸(お腹をふくらませる呼吸)ができると、見たい臓器がぐっと見やすくなるんです。当日、思い出してもらえたら嬉しいです。
おまけ:検査技師の私の、健診しくじり
えらそうに書いてきましたが、私自身の健診はというと——。
がんばって臨んでも、変わらないものは変わらない。体重しかり、コレステロールしかり。そして視力だけは、毎年確実に悪くなっていく。これだけは、節制ではどうにも止められません。
老眼も進みました。本を読まなくなったのは、そのせいです。あるとき、ふと鏡にうつった自分を見たら——眉間にしわを寄せ、本をうんと遠くに離した、恐ろしい顔の私がいて、静かに引きました。
数値は読めても、老いは読めない。健診の紙の外側で、体は正直に進んでいくのでした。
まとめ
- 前日の夜は軽めに、19時ごろまで。お酒(γ-GTP)と脂っこいもの(中性脂肪)は直結
- 当日は水1杯OK。薬は必ず事前に確認(とくに糖尿病の薬)
- 前日の筋トレ・山登りは数値に出ます。前日だけは、おやすみを
- 服はセパレートで脱ぎ着しやすく、ストッキングとアクセサリーは避けて
- エコーの日は、コーヒーをがまんして、腹式呼吸を思い出して
健診は、1年に1度の「体からの通信簿」。どうせ受けるなら、正確な数字で受け取りましょう。ふだんのあなたの体が、いちばん知りたいことなのですから。
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※この記事は、検査技師としての一般的な知識をまとめたものです。絶食やお薬の指示は施設によって異なります。必ず受診先の案内と、主治医の指示にしたがってください。