2026年7月
健康・検査のこと心電図の電極、なぜ10個も?|胸の吸盤、女性の服装、受けるときのコツ
健診で、胸に丸いものをいくつもつけられて、手首と足首にも何か挟まれて。「これ、何を測っているんだろう」と思ったこと、ありませんか。
心電図です。健診では、たいてい受ける検査。それなのに、意外と「何をされているのか」は知られていません。
今日は、検査技師の側から、この検査のことをお話しします。受けるときに、少し気持ちがラクになるように。
心電図は、心臓が動くときの小さな電気を「拾って」記録する検査です。体に電気を流すわけではありません。痛みもなく、数分で終わります。
電極は、胸に6個、両手首・両足首に4個の、ぜんぶで10個。
健診の基本の検査ですが、正常でも「異常が完全にない」とまでは言い切れないので、症状があるときは追加の検査に進むこともあります。
心電図は、何を見ている検査?
心臓は、電気の合図で動いています。その電気が、どの順番で心臓を伝わっていくか。それを線にしたものが、心電図の波形です。
この波形から、脈の乱れ(不整脈)はないか、心筋梗塞や狭心症のサインはないか、心臓の筋肉に異常はないか、心拍数やリズムは規則正しいか、といったことを見ています。
一言でいえば、心臓の電気の流れを見る、いちばん基本で大事な検査です。胸の痛み、動悸、息切れ、むくみといった症状があるときにも役立ちます。
なぜ、電極を10個もつけるの?
胸に6個、両手首と両足首に4個。「そんなにたくさん?」と思いますよね。
理由は、心臓をいろいろな方向から眺めるためです。この10個の電極で、心臓を12の方角から見ています。正面から見ただけでは気づけない変化も、横から、下から見れば見えてくる。だから電極の位置ひとつひとつに意味があって、それぞれが別々の波形になって出てきます。
健診の心電図は「12誘導心電図」と呼ばれます。電極は10個なのに、12。手足の電極の組み合わせ方と、胸の6個を合わせて、心臓を見る「12通りの角度」を作っているのです。少ない電極で、たくさんの方向から見る工夫なんです。
その丸いもの、吸盤? それともシール?
胸につける電極は、丸い吸盤のことも、貼るシールのこともあります。新しい機械はシールが多いのですが、私が勤める小さな病院は、いまだに吸盤です。
吸盤の跡が気になる方もいると思います。肌の弱い方は、赤い丸がしばらく残ることがあります。でも、時間がたてば消えますので、心配いりません。
ちなみに、痩せている方や毛深い方は、吸盤がうまくつかなくて、こちらが少し手こずることもあります。うまくいかないときは、少し位置をずらしたり、つけ直したり。手間取っても、あわてているわけではないので、どうか気にしないでくださいね。
「力を抜いてください」と言うわけ
検査中、「力を抜いて、楽にしていてくださいね」と、必ず声をかけます。
これには理由があります。体に力が入ると、筋肉から出る電気(筋電図といいます)が混じってしまって、心臓のきれいな波形が撮れないのです。
緊張で脈が速くなっても、大丈夫です。緊張や呼吸で脈が変わるのは、病的な不整脈とは違って、波形を見れば区別がつきます。ですから、どうぞ気楽に、体をあずけていてください。
女性の方へ——服装と、遠慮しないでほしいこと
胸に電極をつける検査なので、服装を心配される方は多いです。少し、具体的にお話ししますね。
- 下着や服は、脱がなくて大丈夫です。上にずらすだけで検査できます。
- ただ、上下がつながった服より、セパレート(上下の分かれた服)だとスムーズです。足首にも電極をつけるので、ストッキングやタイツは、なるべく避けてもらえると助かります。
- 電極の位置は、正確さが大事です。胸の「第4肋間」という場所を探すために、少し胸のあたりに触れて位置を決めます。だから、最初に一声かけますね。
そして、これは私自身の反省でもあります。混んでいると、つい急がせてしまうことがあるのです。タオルは必ず用意しています。 「かけてほしい」と、遠慮なく言ってください。我慢しないでもらえたら、うれしいです。
「異常なし」でも、安心しすぎないで
心電図が「異常なし」でも、それは「記録できた、その数分間の範囲では」という意味です。
時々しか出ない不整脈や、体に負荷がかかったときだけ現れる変化は、その数分に写らないことがあります。だから、気になる症状があるときは、24時間記録するホルター心電図や、心エコーなどの追加検査に進みます。
ここで、私自身の話をさせてください。
私の普段の心電図は、異常なしです。
でも、たまに不整脈が出ます。心室性期外収縮といって、脈が時々、予定のタイミングより早く一拍打つものです。「多く打つ」というより、「フライング気味に、早く出てしまう」一拍です。
ほかに、脈がふだんより速くなること(上室性頻拍)もあります。心臓そのものの病気というより、緊張や自律神経の乱れで起こることが多いもので、私の場合は、少し息をこらえると落ち着きます。とはいえ、動悸が長く続くときや、胸の症状をともなうときは、我慢せず受診してくださいね。
自分の体のことも、一回の結果で決めつけず、続けて見ています。心電図の記事でも、やっぱり、点ではなく線なんです。
じつは、心電図を読むのが好きなんです
私はふだん、心臓の超音波(心エコー)検査もしています。心臓の動きそのものを見るその仕事にとって、心電図は欠かせない相棒です。動く前の「電気の合図」を心電図で読み、その合図どおりに心臓がちゃんと動いているかをエコーで確かめる。二つはいつも、セットなんです。
そして、白状すると——私は、心電図を読むのが好きです。この一枚の紙から、心臓がどんな順番で、どんなふうに動いたのかを一つずつたどっていく時間が、昔からおもしろい。だから、健診でつける10個の電極を、どうか面倒に思わないでもらえたら、うれしいです。
さいごに
心電図は、心臓からの短い手紙のようなものだと思っています。10個の電極は、その手紙を、いろいろな角度から読むための道具です。
脈の乱れといえば、脳卒中の引き金になる心房細動も、健診の心電図で見つかることがあります。動悸や脈の乱れが気になる方は、そちらの記事もあわせて読んでみてください。健診そのものの受け方は、健診の前日にやらないことにまとめています。
胸につける、あの丸い吸盤。次に受けるときは、少しだけ、心臓の声を聞いているところなんだな、と思ってもらえたら。
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。気になる症状や、検査の判定については、医療機関でご相談ください。