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おひとりさま検査技師のひとりごと
― 検査技師の目線で、健康とおひとりさまの暮らしを ―
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2026年7月

仕事のひとりごと

石の上にも、3日。|向いていなかった私が、検査技師を30年続けるまで

「あれ、なんだっけ。」

今日も検査室で言った。たぶん、明日も言う。3歩歩けば忘れる。人と話すのも、得意なほうじゃない。勉強も苦手で、覚えたそばから抜けていく。

そんな私が、臨床検査技師という仕事を、卒業から30年続けている。

自分でも、ときどき不思議になる。だから今日は、その30年を振り返ってみようと思う。

白衣の検査技師が歩いてきた道を振り返ると、点と点がつながって一本の線になっているイラスト

志望動機は、立派じゃなかった

なぜこの仕事を選んだのか。

縁の下の力持ちみたいな職業が、好きだったから。舞台の真ん中に立つより、裏で支える側にいたい。理由は、ほとんどそれだけだった。「人の命を救いたい」というような、立派な使命感があったわけではない。

そして、ここでひとつ、30年間誰にも言わなかったことを書いてしまう。

じつは当時、検査技師の学校と並行して、もうひとつ別の学校にも通っていた。税理士の受験資格が得られる学校である。数字をこつこつ扱う仕事も、性に合う気がしていた。白衣と電卓。二つの道を、こっそり天秤にかけていたのだ。

もう昔のことだから、時効だと思う。

運には、見放されていた

進路は検査技師に決めた。ただ、道のりは、お世辞にも順風満帆ではなかった。

国家試験の前日に、インフルエンザにかかった。高熱の体で受けた試験を、それでもなんとか、合格した。世の中は超氷河期と呼ばれる就職難で、これもなんとか、滑り込むように就職した。

「夢に向かって一直線」という話なら格好がつくのだけれど、実際は、流されてここまでやってきた。それが正直なところだ。

向いていない、と何度も思った

働き始めてからも、失敗ばかりだった。

昭和の職場である。言えないくらい怒られた。理不尽なことも、たくさんあった。患者さんの前で冷や汗をかきながら、頭の中が真っ白になったことも、一度や二度ではない。

向いていないんじゃないか。何度も思った。

石の上にも三年、というけれど、三年なんて気の遠くなる話で、私はもっと小さく刻んだ。まず、3日。次は、3ヶ月。それがすんだら、3年。 自分をだましだまし、その繰り返しで、気づけばここまで来てしまった。

そのころ、当時の職場長に言われた言葉がある。「病む人の心を。」——ただ、それだけ。若くて、自分も元気だった私には、意味がわからなかった。今思えば、わかっていないなりの接し方を、患者さんにしていたのだと思う。この言葉に追いつくまでに何十年かかったかは、「病む人の心を」という記事に書いた。

忘れっぽさや、なぜか怒られることの多さに、思い当たる理由が見えてきたのは、ずっとあとのことだ。娘のことがきっかけで、自分にも重なるものがあると気づいた。その話は働き方を変えたときの記事に書いている。

30年たって、わかったこと

それで、いまどうなったか。

いつの間にか、この仕事が好きになっていた。

いつからかは、自分でもわからない。ただ、怒られたことも、冷や汗も、遠回りも、ぜんぶがいつの間にか糧になっていた。あのとき点でしかなかったものが、あとから振り返ると、一本の線につながっていた。

運もあった。でも、なるようにしてなってきた。そして、それがいまにつながっている。30年やって、ようやくそう思えるようになった。

天秤にかけた、もうひとつの道は

ところで、選ばなかったほうの道——税理士の学校で覚えた数字好きは、どうなったか。

無駄にならなかった。毎月の家計簿になり、自分に手取り20万円の「自分月給制」になり、このブログの「家計・節約」のカテゴリになった。

検査の話と、お金の話。このブログの二本柱を眺めていて、あるとき気づいた。30年前に天秤にかけた二つの道は、どちらも捨てずに、ここで合流していたのだ。点と点は、こんなところでも線になる。

いま、「向いていない」と思っているあなたへ

もし、いま「この仕事、向いていない」と思いながら働いている人が読んでいたら、私が言えるのはひとつだけ。

30年後にどうなっているかは、誰にもわからない。向いていなかったはずの私が、いつの間にか好きになっていたのだから。

だから、三年とは言わない。まず、3日。

今日も私は検査室で「あれ、なんだっけ」と言っている。それでも、この仕事が好きだ。

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