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おひとりさま検査技師のひとりごと
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2026年7月

仕事のひとりごと

「60過ぎたらわかるから」と言われて、見えてきたお金の現実

医療職は忙しい割に賃金が安い。これはもう、ずっと言われ続けてきたことです。

うちの職場も例に漏れず、若い人がなかなか入ってきません。入ってきても、数年で辞めていく。そうなると人手が足りないから、定年を迎えた人にもう一度働いてもらうことになります。再雇用です。結果として、職場の平均年齢はじわじわ上がっていきます。

私も50代。いつまで働くんだろう、という問題は他人事じゃありません。そんな中、今63歳になる方の話を聞いて、いろいろと考えさせられました。

ひとりの食卓で、お金と制度のことを考えている様子のイラスト

▲ 実は、この記事は「俺のイタリアン」でひとり食事をしながら考えていました。

俺のイタリアンの前菜。サーモンや豆、サラダの盛り合わせとパン

▲ おいしいものを食べながら、頭の中は制度のことでいっぱい。

元上司の、ぼやき

その方は、60歳になるまで私の上司でした。パートの私に対してもノルマを課し、きっちり仕事をさせる人でした。厳しい人、という印象を正直持っていました。

60歳で定年を迎え、再雇用になりました。仕事の内容も量も、以前とほとんど変わりません。なのに、賃金だけが下がりました。

最近、その方がぼやくのを聞くようになりました。「やる気が出ない」と。

仕事量は同じなのに給料だけ下がれば、やる気が削がれるのは、正直よくわかります。頭ではわかるのだけれど、なんとも言えない気持ちにもなりました。

さらにこんな話も出ました。「64歳で辞めれば、65になる前だから失業保険がもらえる」と。後進の育成とか、今後の職場のこととかより、自分の損得の話ばかりが先に立っているように聞こえて、正直モヤッとしました。

「60過ぎるとわかるから」

そう言われました。

その後ろ姿を見ていると、たしかに、少しずつ見えてくるものがあります。若い人にノルマを課していた人が、今は自分の賃金と体力とやる気のバランスに悩んでいる。厳しかった上司が、今は制度に振り回される側に回っている。

皮肉だな、と思う一方で、これは私の数年後、十数年後の姿でもあるんだろうな、とも思います。抗えない現実というのは、こういう形でやってくるのかもしれません。

調べてみた、60代のお金の制度

感情だけで終わらせたくなかったので、実際の制度を調べてみました。「64歳で辞めれば失業保険がもらえる」というあの発言、実はちゃんと理由のある話でした。

失業保険は、64歳で辞めるか65歳で辞めるかで別物になる

雇用保険の失業給付は、65歳の誕生日の前日を境に、まったく違う制度に切り替わります

辞めるタイミングもらえる給付受け取り方最大日数
65歳の誕生日の
前々日までに退職
基本手当
(いわゆる失業保険)
分割払い最大150日分
65歳の誕生日の
前日以降に退職
高年齢求職者給付金一時金(一括)最大50日分

日数だけ見ると3倍の差があります。だから「64歳11か月で辞めるのが得」と、よく言われるのです。

でも、64歳で辞めると年金が止まる

ここが見落とされがちなポイントです。65歳未満で基本手当を受け取っている間は、特別支給の老齢厚生年金が支給停止になります。つまり「失業保険をもらう代わりに、年金は我慢する」という選択になるのです。

一方、65歳以降に辞めて高年齢求職者給付金をもらう場合は、この年金の支給停止がありません。年金を満額もらいながら、一時金も受け取れます。

だから本当の損得は、「その人の年金額がいくらか」「失業給付でいくらもらえるか」によって変わります。年金額が高い人ほど、65歳以降に辞めて年金と一時金を両取りする方が有利になりやすく、年金額が少なく失業給付の方が大きい人は、64歳で辞めて長めの基本手当を受け取る方が有利になりやすい——というのが、制度の建て付けのようです。

💡 検査技師の豆知識……ではなく、調べてわかったこと
「64歳で辞めるのが得」は半分正解、半分早合点。失業保険をとるか、年金をとるかという二択にすぎず、どちらが得かは人によって違います。損得だけで語れる話ではないのですね。

賃金が下がった分の補填制度も、実は縮小されている

再雇用で賃金が60歳時点の75%未満に下がった人には、「高年齢雇用継続給付金」という、補填の制度があります。ただし2025年4月以降に60歳になった人からは、この補填の支給率が15%から10%に引き下げられました。同じだけ賃金が下がっても、これから60歳になる世代ほど、国からの補填は薄くなっていきます。

つまり、今63歳のあの人が受け取れている補填と、これから私が60代になったときに受け取れる補填は、同じ制度でも金額が違う可能性があるのです。

制度を知って、少し見え方が変わった

「後進のことより自分のことばかり」と最初は思いました。でも制度を調べてみると、64歳で辞めるという選択は、ただの自分勝手というより、限られた選択肢の中での現実的な判断でもあったんだとわかります。

厳しかった上司が、今は制度と体力とお金の間でしんどそうにしている。その姿を腹立たしく思う気持ちと、いずれ自分も通る道なんだろうな、という気持ちが、同時にあります。

「60過ぎたらわかる」と言われた言葉の意味が、今は少しだけわかる気がします。まだ全部はわからないけれど。

俺のイタリアンのデザート、チョコレートケーキとアイス、コーヒー

▲ 重い気持ちも、甘いデザートで、少しだけほどけます。


※本記事の制度説明は2026年6月時点の一般的な内容です。実際の受給額や条件は個人の状況によって異なるため、詳細はハローワークや年金事務所、社会保険労務士にご確認ください。

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