2026年6月
健康・検査のことPFASの血液検査、受けられるの?|検査技師が「7物質・20ng/mL」の意味と、検査の“今”を正直にまとめた
※PFASの健康影響は研究が続いている段階です。本記事は一般的な情報の紹介で、診断や不安をあおる目的ではありません。検査の対象物質・基準値・費用などは時点や施設によって異なるため、最新・正確な情報は各医療機関・公的機関の発表でご確認ください。
前回は、暮らしの目線で水道水のPFASと家庭でできる対策(煮沸はNG・浄水器の話)をまとめました。
今回はもう一歩ふみこんで、「PFASって血液で測れるの?」という、検査技師ならではの目線の話です。実は私の職場でも、血液検査の項目にPFASが導入されました。患者さんや知人から聞かれることも増えてきたので、調べたこと・現場で感じていることを、自分の理解の整理も兼ねて、できるだけやさしくまとめてみます。
そもそもPFASって、なに?(おさらい)
PFASは、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称です。 かんたんに言うと、自然界にある水素(H)を、フッ素(F)に置き換えてつくった人工の有機物のこと。わかっているだけでも4,700種類以上あるといわれています。
もともとはアメリカの3M社で開発されました。熱に強く、光にも強いという性質があり、
- 水や油をはじくコーティング剤
- 泡消火剤
- 殺虫剤の有効成分
- フッ素樹脂をつくるときの加工補助剤 など
として、産業の発展を支えてきました。便利だからこそ、いろんな場面で使われてきたんですね。
ところが近年、その裏側が問題視されるように。PFASはとても分解されにくく、水に溶けやすいため、土の中をゆっくり進んで、やがて地下水の汚染につながると指摘されています。
なかでも有害性で注目されているのが、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)という2つです。どちらもPFASの中で古くから使われ、研究も進んできた“代表選手”。分解されにくく体内にも長くとどまりやすいことから、今では国際的にも製造・使用が制限される方向に進んでいます。日本でPFASといえば、まずこの2つが基準の中心になっています。
(このあたりの「煮沸では消えない」「地域差」「浄水器」の話は、前回の記事にくわしく書いています)
PFASの「検査」は、今どうなっている?
ここからが、検査技師としての視点です。
- 環境の水(川や地下水など)を調べる検査施設は、すでにあります。
- 一方で、人の血液を対象に測れる施設は、まだ少ないのが現状です。
- しかも、血液中のPFASを測るための標準的な検査方法(標準法)も、まだ確立されていません。
つまり「血液のPFASを調べる」というのは、いままさに発展途上の分野なんです。
「7物質」を測る理由
PFASの血液検査では、測る物質の数が施設によって違います。 一般的には2物質、または4物質を測ることが多いのですが、7物質を対象にする場合もあります。
なぜ7物質なのか。これは、米国(全米)アカデミーが示している、こんな指標が関係しています。
7物質のPFASの合計値が、血液1mLあたり20ナノグラム(ng)を超えると、健康への影響リスクが高まる
この「合計値」を判断するために、7物質をまとめて測る、というわけです。
そしてこの20ng/mLという値は、実際に検査所が血液検査の判断基準として用いている数値でもあります。机上の指標というだけでなく、現場で使われている目安なんですね。
なお、よく似た数字に注意してください。日本の水道水には、PFOSとPFOAの合計で「1Lあたり50ナノグラム(ng)」という暫定目標値が定められています。こちらは“飲み水”の基準で、さきほどの“血液”の指標(1mLあたり20ng)とは、測る対象も単位もまったく別物です。水道水の話は前回の記事にくわしくまとめています。
ざっくり並べると、こんなイメージです(※どの物質を測るかは施設によって異なります)。
| 測る物質数 | 主に測る物質 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 2物質 | PFOS・PFOA | いちばん代表的で、規制の中心。最小限のチェック。 |
| 4物質 | 上記+PFHxS・PFNA など | よく使われる組み合わせ。少し範囲を広げてチェック。 |
| 7物質 | さらに PFDA・PFUnDA などを追加 | 米国アカデミーの「合計20ng/mL」という指標に対応。 |
「数が多いほどえらい」という話ではなく、何を目安に判断したいかで測る項目が変わる、ということですね。
病院で血液検査を受ける——メリットと、正直な注意点
PFASの血液検査を病院で受ける場合の、ちょっとした強みがあります。
それは、健康診断でおなじみのスクリーニング項目(肝機能・腎機能・脂質など)を、同時に調べられること。体の状態をまとめてチェックできるのは、病院ならではのメリットだと思います。
ただし、正直な注意点も。 PFASの血液検査は、今のところ保険が適用されません。そのため、検査費用はどうしても高額になってしまうのが現状です。「気になるから一度測ってみたい」という方は、費用面も含めて、検査できる医療機関に事前に相談するのがよいと思います。
まとめ
- PFASは、フッ素を使った人工の化合物で、4,700種類以上ある
- 分解されにくく水に溶けやすいため、地下水汚染などが問題に(注目はPFOS・PFOA)
- 環境の水の検査はあるが、血液検査ができる施設はまだ少なく、標準法もこれから
- 「7物質・合計20ng/mL」という米国の指標が、検査項目数のひとつの目安
- 病院なら他の健診項目と同時に調べられるが、保険適用外で高額
まだまだわからないことの多い分野ですが、身近な水や暮らしと関わる話です。検査技師として数字を見てきた立場からも、PFASは「むやみに怖がらず、正しく知って淡々と付き合う」のがいちばんだと思っています。
・水道水のPFAS、煮沸では消えません|地域差と家庭でできる対策(浄水器)
※本記事は一般的な情報の紹介であり、特定の検査の効果や安全性、健康状態について断定するものではありません。気になる症状や検査については医療機関へ、地域の水質については各自治体・公的機関の最新情報をご確認ください。